生前贈与と遺言
2013年2月18日 月曜日
自分の親や配偶者の名義になっている不動産を,その名義人の死後,相続人となる自分が確実に取得するには,どのような方法があるでしょうか?
このような場合,A生前贈与により名義人が生きているうちに名義を取得するか,B自己に相続させる旨の遺言をのこしてもらう,ことが一般的です。
では,AとBのどちらの方法によるべきでしょうか?
結論としては,いずれにしても一長一短があるので,ケースバイケースということになるのですが,2つの方法を検討し理解した上で選択することが大切です。
A 生前贈与による場合
生前に不動産の名義を取得しておく方が確実なので、心理的・精神的に安心感を得ることができます。
(ただし、生前贈与は、相続分の前渡しとして、相続が発生した際には、生前贈与された価額は特別受益として相続財産に組み込まれることになるので、これを回避するには遺言により「持ち戻しの免除」をしておく必要があります。)
一方,生前贈与による場合は,Bの遺言による場合と比較して,費用が割高になってしまうのが難点です。
仮に不動産の固定資産税の評価額を1000万円と仮定すると,
1 登記の際の登録免許税1000万円×2%=20万円
2 不動産取得税1000万円×3%=30万円
合計50万円の税金がかかります。(司法書士費用その他実費を除く。)
さらに、生前贈与の場合には、贈与税の課税を回避するために特例の適用を検討することが不可欠です。
詳細は省略しますが、特例として,相続時精算課税制度や夫婦間贈与の特例などがあります。
もしも特例を適用しないとすると,1000万円の贈与の場合,贈与税はざっと、350万円!
B 遺言による場合
不動産の名義人本人が,「自己の不動産を長男Aに相続させたい」などという意思を持っている場合には,遺言を遺してもらうことも有効な方法です。ただし,手書きの遺言(「自筆証書遺言」といいます。)の場合には,いろいろと問題が生ずることが多いので,争いになることが予想される場合には,公正証書によることをお勧めします。(これについては,またの機会に詳しく述べたいと思います。)
遺言による場合には,公正証書にする場合にはその費用と,相続登記の費用が発生しますが,生前贈与による場合よりも割安です。
仮に不動産の固定資産税の評価額を1000万円と仮定すると,
1 公正証書代 約3万円
2 相続登記の際の登録免許税1000万円×0.4%=4万円
合計 約7万円かかります。(司法書士費用その他実費を除く。)
ただし,遺言による場合には,①遺言者は後に自らの意思で遺言の内容を変更することができること,②特に,自筆証書遺言の場合ですが,名義を取得することができない他の相続人から異議を唱えられるおそれがあること,などが考えられます。
ちなみに,A生前贈与とB遺言による方法の折衷案として,「死因贈与」というやり方もあるのですが,これは,特殊なケースに該当する場合にのみお勧めする方法なので,ここでは割愛します。
いずれにしても,何も対策を講じていないと,ドロドロの争いに巻き込まれるということもありますので,心当たりのある方はご相談を。