2011年12月8日
「放蕩息子が私に散々苦労をかけて,遺産を一切あげたくない」とか,「息子よりも娘にたくさんお金を援助したので,息子の方に遺産を残したい」といった遺言に関する相談を受けることが,結構あります。
相続人が自分の子どもの場合,当該子には遺留分という最低限の取り分があるので,「(遺留分も含めて)一切の財産をあげない」というのは,なかなか困難です。実務上,遺留分を侵害する遺言をしたとしても,当該遺言そのものは,無効になるというわけではありませんが,被相続人の死亡後に遺留分権利者が遺留分を主張した場合には,当然に当該遺留分を取得することができる,とされています。
話を戻しまして先ほどの相談の話ですが,よくよく聞いてみると「相談者は遺留分相当の財産をすでに特定の息子(娘)のために使った」という場合がほとんどで,このような場合はいわゆる「生前贈与」によって遺留分相当分を遺留分権利者に渡していることを遺言によって明らかにすれば,相談者の期待に沿うような結果を得ることができます。
このような遺言を作成する際のポイントは,①生前贈与の内容をなるべく明らかにすること,②「この遺言を自分の死後,息子や娘が見たときにどう思うか,かえって紛争の種を残すことにならないか」ということを考えて,「なぜ,このような遺言をしたのかを,きちんと,やわらかいコトバで(感情を逆なでしないようなコトバで)書くこと」です。そして,「私の遺産について決して争うことなく,兄弟仲よく暮らして欲しい」といった率直な希望や想いもなるべく書いた方が,より気持ちが伝わって争いを防ぐことにつながります。