2013年9月12日
離婚による財産分与について、以下備忘録として。
離婚による財産分与とは、婚姻生活中に夫婦の協力によって得られた財産を、離婚時に清算することをいいます。
対象となる財産は、「婚姻生活中に夫婦の協力によって得られた財産」ですから、主に婚姻後に取得した不動産や
預貯金などが一般的ですが、夫の単独名義のものであったとしても、その対象に含まれます。(妻の寄与貢献を
認め、実質的には共有財産と考えられるため。)
一方で、婚姻前に夫婦各自が所有していた財産や、婚姻中に夫婦のいずれかが相続や贈与等で得た自己名義の財産は、
原則として財産分与の対象とはなりません。
では、内縁関係にある間に共同で不動産を購入し、その後婚姻、離婚に至った場合は、どうでしょうか?
たとえば、A男とB女は、内縁関係にある間に持分A2分の1、B2分の1の割合でマンションを購入したとします。
(登記名義は、A持分2分の1、B持分2分の1)
その後、AとBは、婚姻し、BはAの姓を名乗ることとなったが、離婚によりBは旧姓に戻った。
そして、離婚後AB間の話し合いにより、Bの持分2分の1をAに譲ることとなった。
ここで、B持分2分の1をAに移転するにあたって、登記原因は、「財産分与」になるのか、「贈与」になるのか、
という問題です。
登記を申請するにあたっての問題点は、次のとおり。
① 財産分与は、婚姻期間中に夫婦で得た財産を清算する制度なので、婚姻前に取得した不動産については、
その対象とはならないのではないか、ということ(登記官からしてみれば、登記簿上A、Bの姓が異なる名義で登記されて
いるので、「財産分与」で申請しても、A、Bが婚姻関係にあったとは分からず、却下するほかないのではないか、
ということ。)。ちなみに、婚姻する前からたまたま同一の姓であった場合や、婚姻後離婚前にBがAの姓に変更する
登記をしていれば、すんなり、登記は通ります。たとえ、婚姻前に取得した不動産であったとしても。
② 登記が「財産分与」と「贈与」のどちらでなされるのかによって、贈与税等の税金に関わってくるので、当事者に
とっては、重大な利害関係があること。
③ あと、今回の事例では問題となりませんでしたが、財産分与は、離婚後2年以内に請求しなければならない点に
注意を要します。(ただし、離婚後2年以内に当事者間で合意が成立していたということで、2年を経過して財産分与の
登記を申請することはよくあります。)
ここで、「内縁関係にある者が、内縁を解消し、一方が他方に財産分与すべき」旨が裁判で認められた場合には、
婚姻関係になかったとしても、「財産分与」を原因として、登記を申請することが認められています。
結論として、私が意見照会した法務局では、「姓の違うBからAに財産分与を原因とする登記申請をすることを
認める」ということでした。ただし、「登記原因証明情報(法務局に提出する登記の原因を明らかにする書面)には、
内縁から財産分与に至るまでの過程(内縁→不動産共有取得→婚姻→離婚→財産分与)を詳しく記載し、
かつ婚姻と離婚の旨が分かる戸籍謄本を添付して欲しい」、とのことでした。
ところで、この登記の申請にあたっては、マンションの底地が区画整理中で「畑」のままであったため、
仮換地証明等などを取得して、(行政書士の資格で)農業委員会に農転の届出をする、といった手続も
必要となるおまけ付きでした。(区画整理中の土地については、たとえ現況が「宅地」であっても、地目を変更することが
できません。そして、地目が「畑」や「田」などの農地の場合には、所有権を移転するにあたって、農業委員会を通じて
県知事の許可を得たり、届出をしたりする必要があるのです。)